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上田会計レポート NO.131

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「THINK LIKE ZUCK」 マック・ザッカーバーグの思考法

大阪市中央区の上田公認会計士事務所の上田です。

残春の候、街路樹の緑も日に日に濃さを増しているようです。皆様はいかがお過ごしでしょうか。

本日は『「THINK LIKE ZUCK」マック・ザッカーバーグの思考法』

(エカテリーナ・ウォルター著、斎藤 栄一郎訳)をご紹介します。

本書の主人公であるマック・ザッカーバーグは、2004年のハーバード大学在籍中に他のハーバード大学の学生と協力し「Facebook」所謂SNSを開設し、現在はFacebookのCEOに就います。2010年のTime誌で、その年に最も活躍・話題となった人物とされる「Person Of The Year」に選ばれています。

2010年にマーク・ザッカーバーグの生い立ちを映画化した『ソーシャル・ネットワーク』が話題となりました。本書においても、マーク・ザッカーバーグの育った環境からFacebook創設、そして、現在ユーザー数が10億人を超えるまでに至ったFacebookの成長の歴史を振り返りながら、「一代で築き上げた、最も影響力のある情報配信の仕組み」の成功の謎を解き明かしています。

  著者はフェイスブックの成功要因について、以下の5つを挙げています。

(1) 情熱『Passion』
(2) 目的『Purpose』
(3) 環境
(4) 製品『Product』
(5) 経営資源(時間、資本・投資家、資金調達、教育、経験・技能・人材『People』、自然資源、生産能力、 パートナーシップ『Partnerships』)
本書においては、上記の要因のうち『情熱・目的・製品・人材・パートナーシップ』を5Pとして取り上げ解説し、同時に他の様々な企業の事例を取り上げ、この鉄則の大切さを検証しています。この5Pの内容について簡単にまとめてみました。

(1) 情熱(Passion)

情熱はすべての原動力であり、粘り強く本気で夢を追う人間に「失敗」という言葉はなく、「失敗」は何ものにも代えがたい経験となります。

「情熱+行動=成果」

行動を伴わない野心には、なんの意味もありません。行動しなければ野心は結果を生まない。ここが偉大な起業家と普通の起業家との分かれ目となります。

情熱があれば、自分というものがわかり、人生をかけて何をしたいのかが見えてくる。そういうことがわかってくると、今度は目的が明らかになる。目的がはっきりすると、アイデアが浮かび、創作物が生まれ、製品づくりにつながり、やがてイノベーションが促進されていきます。

(2) 目的(Purpose)

目的をもとに企業の方向性が決まります。

成功企業は、行動の一つ一つが必ず目的に根ざしており、どんな製品を作り、どんな社員を雇い、どんな労働環境を整備すべきか、あるいは、そこに集まってくる顧客・投資家、構築しようとするパートナーシップ、製品・サービスの販売方法、顧客サービスの提供方法に至るまで、何をとっても目的に繋がっています。

また、長期的に顧客をファンに取り込むポイントは、個々の製品でも値引きでもなく、顧客が会社の使命に共感させられるような理念を持っているかどうかで決まります。

成功企業と同様に優れたリーダーは、目的意識を持って行動し、どんなに逆風にさらされても、自らのビジョンを守り通し、信念を貫いて実行する勇気を兼ね備えています。

(3) 人材(People)

会社は個人戦ではなく団体競技です。

どんなに素晴らしい製品・サービスを思いついても、その経営者のビジョンや夢を共有しカタチに出来る人材、そしてチームワークがなければ結局、夢は夢で終わってしまう。その為、どんな会社でも長期にわたって成功するうえでもっとも重要な要素、それは会社の理念や価値観、目的を共有し「一致団結して同じ夢を追いかける」人材の質です。

また、経営陣が部下を全面的に信頼し、リスクを取る事へのゴーサインを出し、時に失敗も許す程の権限移譲することで、最高のモチベーションになり実力以上に頑張ってくれます。

社風は企業の成否を直接左右します。会社設立当初は数人で一緒に仕事をしておりゴールを目指しているが、会社が大きくなり始めると大きな目的を共有する人材又は創業メンバーが築き上げた環境に溶けこんでくれるような人材を見つけるのは容易ではない。そんな時こそ、経営陣が社風を明確にし、浸透させ、社風に沿った価値観に合わせて採用戦略を策定し、適切な人材を採用すべきです。

リーダーの役割はアイデアを生み出すことではなく、アイデアが生まれるような環境を整えることにあり、そのような環境であれば、イノベーションが生まれるだけでなく、会社が苦しい時期でも社員のモチベーションが維持できます。

(4) 製品(Product)

会社の急成長は、経営者にとってワクワクするものだが、ライバルの研究・ユーザーの行動を分析等的確に管理・改良できなければ命取りになります。
また、敵は競合他社だけとは限りません。マンネリと危機感喪失も立派な敵であり、現状に満足し過ぎると、次の殻を破れなくなります。その為、成功を続ける賢いリーダーは、成功体験からくる脱力感で判断が失われないように常に切迫感を持ってキビキビと動ける環境づくりをしています。

素晴らしいアイデアはどこに転がっているかも、誰が思いつくかもわかりません。革新的な企業は、社内に革新の風を吹き込み続け、個人レベルでの自己革新の雰囲気を職場に作ると伴に、社員が自己改革を考えるように後押しするだけでなく、実際に実行できるように機会を与える仕組み作りが上手く出来ています。

(5) パートナーシップ(Partnerships)

成功はチームスポーツである。

大きな夢の実現に必要な知識やスキルを一人で全て身につけることなど不可能です。他者と連携してゴールを達成するのは、人間としてごく自然な行動です。

パートナーシップを築く理由は多岐に渡ります。一口にパートナーと言っても、投資家・スキルや経験を提供しビジネスの発展に貢献する社員・必要な経営資源を補完する取引先・精神的な支柱となる配偶者や家族・顧客もパートナーと言えます。このようにあらゆるカタチのパートナーシップを大切に扱わなければ、ビジネスの成功という巨大なパズルは完成し得ません。それだけにパートナーシップをどう捉え、どう育んでいくのかは極めて重要となります。

本当に優れた企業は、経営陣が能力や経験を互いに補完し合える顔ぶれになっていることが多く、企業の経営陣がそれぞれ違う資質を持ち寄り、同じ目的を共有する。これこそ最強のパートナーシップといえるのではないでしょうか。

従来のITベンチャーの経営は、創業者が、経験豊富な者を招いて会社経営を任せるのが一般的であったが、FBでは、製品開発と優秀な運営の2本の柱で、相互に補完し合う2人が率いるカタチで、戦略的なパートナーシップで発展を遂げています。著者はこれを「ビジョナリー&ビルダー」モデルと呼んでいます。

「ビジョナリー」とは、先見性あるビジョンを描ける人物で、『夢の設計』を担い、会社の目的を熟知し、その目的にそって長期的な戦略計画を練り、ひらめきと壮大なビジョンで会社を引っ張って行く人を言い、 「ビルダー」は『価値の設計』を担うパートナーで、ビジョナリーの仕事を支え、実務面から使命達成を確かなものにします。

両者は全く違う性格であり、相互のビジョン、関心、スキルは重なっておらず、パートナー同士がそれぞれ相手の持っていない独自のスキルを備えていなければなりません。

パートナー相互の能力を補完しあうこのモデルは、これからのパートナーシップのスタンダードになるでしょう。

2014年5月号

上田公認会計士事務所
上田 久之